『「休日に寝だめ」は逆効果』は本当かな?

「休日に寝だめ」は逆効果=平日差大きいほど不眠、抑うつ−働く人の睡眠調査
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007031700051

休みの日に遅くまで寝ている人ほど、不眠や抑うつを訴える割合の高いことが17日、働く人を対象とする内村直尚久留米大助教授(精神神経学)の調査で分かった。平日の睡眠時間の短さは、抑うつと強く関連していた。
 同助教授は「時間が不規則だと熟睡感が得られない。良い睡眠のためにはできるだけいつも同じ時間に起きることが重要」としている。
 調査は昨年12月、首都圏の35〜59歳の勤労者約9000人を対象にインターネットで実施、約6000人から有効回答を得た。
 それによると、平均睡眠時間は平日6.1時間、休日7.3時間。休日の起床時間が平日より2時間未満遅い人が不眠を自覚する割合は25.9%なのに対し、2〜3時間で29.4%、3時間以上で33.3%と、平日との差が大きいほど不眠の人が多かった。
 抑うつ経験も、2時間未満4.3%、2〜3時間5.2%、3時間以上6.2%となった。

あのね、睡眠時間が不規則な人が鬱状態になるんではなくて、鬱状態とか精神的な負担の大きい状態*だから*睡眠時間が長くなるのでは? 疲れているときとか心理的にダメージがあるときは普通に睡眠時間は多くなるよ。 平日に睡眠時間が少ないのは仕事が忙しくて寝れる時間が少ないから。 理由のない人が「平日だけ」睡眠時間が短くなるはずがないんです。「睡眠時間を短くしよう」と思って短くしているわけではない。
寝たいけど仕事が忙しいからしかたなく睡眠時間を削ってるんです。仕事が忙しい人のほうが忙しくない人よりも精神的負担が大きいに決まってる。仕事に大きな責任を感じているからこそ長時間働いているんです。責任を感じているなら鬱になりやすいよ。

「関連性が反対ではない」という実験を同時にやらないと結論だせないと思う。この調査だけでは因果関係がわからない。 「普通の人に不規則睡眠をさせると鬱になるか」とか 「鬱状態の人を無理やり規則的な睡眠をさせると回復する」って実験をやらないといけない。 その実験の結果は「鬱にはならない」「回復しない」だと勝手に予想します。

この調査をしている内村直尚さんの名前でぐぐってみると、睡眠障害についての研究をしている人みたいだ。うーん、自分の研究にとって有利な方に結論を持っていきたい気持ちはわかりますが。だからといって「反対実験を行わずに睡眠側に重点を置いた結論に持っていってもいい」というわけではないよ。鬱の研究をしている人にこの調査をしてもらうとたぶんぜんぜん違った結果になる。「精神的に負担が大きいほどに睡眠時間が長くなる」とか「疲れてるほど睡眠時間が長くなる」とかごく普通の結論になるんじゃないかな。それだとニュースにならないとは思うけどね。

これを信じて「疲れているにも関わらず睡眠時間を短くする」って人が出てくると回復すべきものが回復せずにより疲れがたまるってことになるんじゃないかな?事象の一面だけを取り出し、自分にとって都合のいい仮説を流布して世の中の人を惑わすのはやめましょう。

あと、これを「無条件に信じたい」ってモチベーションがある人は「規則正しい生活信奉教」に入信する資格があります。というかmixiでこのニュースへの肯定的なコメントが目白押しなのが面白い。なんでみんなそんなに規則正しい生活が好きなんだろ。学校教育の成果ですか?

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)

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