外山恒一さんの言う「スクラップ&スクラップ」とはなんだろうか

確かに全部をぶち壊したほうがいいこともある。
アメリカが大きく発展できたのは、先住民を虐殺して大きな土地を得たため。
日本が戦後急速に復興できたのは、それまでの軍事主導の政治体制がいったん白紙になったからだと思う。

「全部ぶち壊す」のは国の長期戦略を考えると必要なのは間違いないんだけど、
なかなか内部からそれを行うってのは難しい。

完全に日本を壊すとすると、憲法を破棄するとか、天皇を廃位するとかかなあ。
でも外山恒一さんは天皇の存在意義を認めてるからそれはなさそうだ。

どうやったら日本を壊すことができるだろうか?

単純に政府組織をぜんぶ解散しちゃえば崩壊することはできる。
「今日から政府はないので、みんな好きにやってね」と言えばいいだけだ。
無政府状態ですね。

戸籍がないので公的な人物証明方法がなくなる。
公定歩合がなくなるので、金利が自由化される。
年金はなくなり、健康保険は個人で加入することになる。
義務教育はなくなり教育レベルは一気に低下する。
幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学はすべて有料化され、実質的に半分以上の学校は存続できなくなる。

国同士のまとまった外交ができなくなるので、国際的な発言力はほぼ0になる。
政府関係者というものが存在しなくなるので教科書とか靖国神社への参拝については何も言われなくなる。

警察力がないので、犯罪を取り締まることはできない。
犯罪者を捕まえても裁判所がないので裁く人がいないし、
刑務所がないので牢獄に入れることもできない。
治安は悪化して、武闘派勢力同士が戦うことになる。

軍隊がないので攻められ放題だ。
北朝鮮あたりが攻めてきても対抗する手段がない。
日本を複数の勢力が分割領有することになるだろう。
たとえ分割領有が発生しなくても、国内勢力の武力による制圧への危険は常にある。
結局はどこかで政府への編入が行われてしまう。

たぶんどこかの勢力が攻め込むよりも先に国内の武闘派勢力同士の争いで、
勝利したものが日本を支配することになるだろう。
経済力と武力を両方兼ね備えた連合勢力が最終的に勝利する。

その過程で数百万人は死ぬだろうし、経済効率は大幅に低下する。
数十年の間は先進国とは言えなくなるだろう。
その後に発展する下地ができる可能性はあるとは思うのだが。

ちょっとこれはやりすぎだと思う。

スクラップ&スクラップといっても政府をなくしてしまったのでは、リスクが大きすぎる。
やはりそれはスクラップ&ビルドの「ビルド」の部分を含んだプランでなくてはならない。
壊すだけでは現行政府以外の勢力に隙を与えるだけにしかならない。
破壊を行うなら、隙を作らずに高速に再建することが必要だ。

というかIridiumの個人的な意見としてはスクラップ&スクラップというのはお題目として棚上げしておいて、
少数者のための、社会的弱者のための実質的な施策をどんどん実行していったほうがいい。
子供や老人、ホームレスや低賃金労働者のためになることをするべきだ。
石原都知事がどんなに頑張ってきれいな公園を作っても、そこにホームレスが存在しているようでは自分は幸福になれない。
環境がちょっとくらい悪くても、ホームレスがいないほうがいい。
公園が少なくても家族や友達から虐待されている子供がいないほうがいい。

壊すことはあくまでも手段の一部であって目的ではない。
何一つとして壊さずに物事を成し遂げることができるのであればそっちのほうがいいのだ。

ただ「物事を成し遂げるためには、何かが壊れることを恐れないぜ」という宣言として、
スクラップ&スクラップということを言うのはいいのかもしれない。
現状維持することを決して目的としない、というのは一つの見識だとは思う。*1

*1:外山恒一さんの演説はパフォーマンスアートとしての一種のフィクションだとは思うんだけど、やっぱりその中には真実がある。完全にネタという意識だけでやっているわけではない。裏側には現状への問題意識があるし、弱者へのシンパシーや体制への不信がある。現時点では架空のものであっても最終的にはどこかで現実的な解を得るべき「思い」であるはずなのだ