靖国神社に戦犯の人を祀っちゃいけないの?

靖国神社:遺族会勉強会、A級分祀容認が過半数

えとですね。
まずはA級戦犯がいったいどういうものなのかが勉強会では議論されてないのでは?

あれはあくまでも勝者が敗者を裁くために決めた刑罰ですよ?
世界大戦ってのはあくまでも植民地獲得戦争の延長です。
「平和に対する罪」なんてことを言い始めたら海外に植民地を持っている人たちは全員同罪です。
つまりアメリカだってフィリピンとか太平洋の島々を植民地にしてますから、もちろん平和への罪はあるわけです。

だから「平和に対する罪」は存在するかもしれないけど、だとしたら裁く側のアメリカも罪人なわけです。
というか、悪い人間を遡っていくと植民地獲得戦争を始めた人や、帆船の改良を行った人に行き着いてしまう。
もちろんアメリカ大陸を発見して先住民の大殺戮を招いたコロンブスは大悪人ということになる。

コロンブスにそこまでの責任を負わせるのは酷というものです。
彼はそこまで考えることはできなかったと思う。
大虐殺のことまでは想像できなかったんじゃないか。
そもそも人権意識なんてものはその時代存在したかどうか怪しい。

要するに過去に遡って、行為を裁くことなんてできないんですよ。
戦争中は「戦犯かどうか」なんて判断する法律は存在していませんから、事後法です。

犯罪者というのは事前に法律があって初めて裁くことができます。
事前に法律がないのであれば犯罪者として認めることはできません。
つまりA級戦犯のみなさんは正確には犯罪者ではないんです。


A級戦犯というのは単に敗戦国の権力構造を崩すための一種の見せしめです。
当時のアメリカにとって「犯罪者かどうか」ということは全然重要じゃないんですよ。
日本を穏健な国に改造する必要があった。
そのために好戦的なリーダーを排除しないといけなかったはずです。
でも排除のための文明的ないいわけというものが存在しなかった。
アメリカは一応文明国なので、なんらかのもっともらしい理由を用意しないわけにはいかない。
(現代でも存在していないのでフセイン大統領はかなり恣意的な裁判を受けたと思います)
強硬派のリーダーたちを殺すための極力文明的ないいわけが「戦争犯罪者」なのです。

当時の世界では武力を持って他国を侵攻するのはごく普通のことです。
それをもって戦争犯罪と言うことはできない。
植民地になった国への搾取はあるかもしれませんが、特に他の宗主国と大きく違いがあるわけではないでしょう。
日本国内での思想的な統制については政治の責任者に大きな罪があるとは思うのですが、
これは国内犯罪であって国際犯罪ではない。

国家をまとめる過程で専制政治を招いてしまったとか、
軍部を台頭させて勝つ見込みのない戦いを始めてしまい、しかも自ら作り出した不敗幻想によって敗北を先延ばしにしてしまった。
ミッドウェー海戦の時点で日本の敗北はほぼ決定してるんです)*1
これは大きな間違いですが、悪意があって行ったわけではない。
ちょっとみんなの頭はおかしくなっていたとは思うけど、言うなれば業務上過失致死ですね。
明治維新が起こったときから専制政治が発生する危険というのは常にあったわけで、いわば必然の流れなんです。
必然の流れを特定の指導者の責任に帰すのはフェアじゃない。

A級戦犯の本質は武闘派勢力の排除であり、一種の見せしめです。
それはあくまでも勝利した側の国の論理です。
実際には「罪」はないんですよ。
明治維新から引きずってきた天皇制を100年以上も見直したり廃止したりすることができなかったというのは致命的でしたが、
改革する能力が不足しているからといって、責められるべきではない。
精神的な観点での先進性を持つ人材を欠いていたということだと思います。
軍部の暴走は皇国幻想から発生している。根拠のない全能感に浸っているからこそ暴走が発生する。
天皇制を見直すことができていたなら、無謀な戦線拡大はなかっただろうし、
不利な状況では撤退できるのであそこまでひどい負け方はしなかったでしょう。
(その前に国内勢力がまとまらずに内紛が発生していた可能性もありますが)

誰かが歴史の矛盾を背負わなくてはならなかった、ということですね。
スケープゴートです。

未来への見通しや歴史的な客観性に欠けた人々ではありますが、
ごく普通にその時代の自分の任務を一生懸命まっとうした。
韓国とか中国の人には悪いけど、やっぱり彼ら個人に罪はない。

Iridium的には第二次世界大戦中に死んだ他の人たちと一緒に神社に入れてあげてもいいんじゃないの?って感じます。
時代に翻弄されたって意味で戦地で死んだ他の人たちとなんら異なるところはないんですから。
まあどこかに祀るってこと自体が後世のみなさんの自己満足ですけども。

重要なのは彼らから何を学ぶかってことかな。
あの時代が教えてくれるのはこういうことです。
「普通に自分の責務を果たしているだけでは十分ではないかもしれない。
 特に自分が権力を持っているなら気をつけろ。
 客観的な歴史観や未来への洞察がなければ自分や多くの人々が殺されたり投獄される場面というものがある。
 情報を集めろ。幻想が人々を動かすメカニズムを理解しろ。
 自分は常に冷静で現実を見つめること。
 幻想に溺れている人たちの言うことにまともに取り合ってはいけない。
 世界で何が起こっているのかを常に把握せよ。真相を突き止めろ。
 なにかマズい事態が進行していると思ったら行動を起こせ。
 改革をためらわないこと。 
 それは多くの人と対立し伝統的な価値観を破壊する行為かもしれない。
 厳しい戦いになる。
 事前にやり遂げる準備をしておくこと。
 どうしても改革達成の目論見が立たないときは逃げ出す用意をしろ。
 自分を鍛え、どんなに苦しい場面でも生き残れ。」

忘れちゃったりどこかにしまっちゃうと彼らと同じ間違いを繰り返す可能性がある。
そういう意味では目立つところに置いといて学習材料にするのがいいと思うけどね。

*1:戦術負けというより暗号解読負け