未来はどんな世界になるだろうか

「20年前から世界がどう変わったか」の続き。

前の日記で何が言いたいかというと、
電子的な微小化に向かう道は比較的なだらかだ、ということです。


それ以外の道というのはそれほど早くは進めていない。
例えば、何十年も前から癌については研究されていて、
21世紀よりもっと前に撲滅する予定だったけど、実際には世の中からなくなっていない。
現状のガン対策というのは「ガン細胞を切除or破壊する」だとか「生体が本来もつ遺伝子修正機能を増進させる」
というような対症療法的なものしかない。
この方法だと全身に転移してしまった末期的なガン患者には対応不可能です。

ガンというのは「遺伝子疾患」なので本質的な対策を行うとするならば、
遺伝子の正常化を行わないといけないんです。
完璧な癌の治療法があるとするなら、その人の正常な遺伝子の形を決めて、
遺伝子の形が壊れている細胞については、すべて正常な形に修正すればいい。
これ、理屈では簡単ですが実際にはナノマシンの技術はそこまで進化していないので今のところは不可能です。



火星になぜ人類がいけていないかというと、たぶんコストかかかりすぎるからです。
国家予算レベルになってしまう*1し、行って帰ってくるだけでも1年以上もかかってしまう。
一応アメリカ的には2030年までに火星に人間を送り込むことを考えているみたいですが、こんな状態では恒星間旅行なんて夢のまた夢です。
まずは時間がかかりすぎるので光速を超える方法を見つけないといけない。
現状ではほとんどSFの世界に入り込んでしまう。
今はまったく未知な方法がなにかあるのか、あるいは不可能なのです。

ちなみにWikipedia 超光速航法というページがあって楽しい。
神林長平の量子的な理屈で作動するワープ(?)は面白い。

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まあ、そんなわけでコンピュータとか電子系の進歩に比べて、他の技術による進歩は遅くなっています。
つまりこの先の世界はどんどん情報の管理とかの方式は洗練されていくばかりなのです。
「そうするとどうなっていくか」を考えるのが今日のテーマです。

  • 1、物流が最適化される
     すべての物流会社が一つのシステムによって構成されるようになります。
     で、最適なパスを通って品物が配送されるようになる。
     要するにインターネットでパケットに対して行っている処理がリアル側に適用されるようになる。
     あらゆる運送に関するフォーマットが規格化、共通化されます。
     物流コストは下がり、トラックの空移動などの無駄な移動が極限まで減少します。
  • 2、電化製品がすべてネットワークに繋がる
     メーカーに故障がリアルタイムに検出できるようになります。
     故障が事前に発見しやすくなるので突然発火するなどの事故が発生しにくくなります。
     もしも異常が発生してもすぐに所有者にアラームが送られるので迅速に対応するきっかけができます。
  • 3、家計簿をつける必要がなくなる
     買い物は自動的に記録されるので、自分がいつなにを買ったのかがわかるようになります。
     もちろんメーカー側も(特定のユーザが設定した許容範囲内で)どんな客が購入したのかがわかります。
     マーケティングの精度が向上します。
  • 4、どのテレビがどの番組を映したのか正確に把握できるようになる
     ほぼ完璧にリアルな視聴率を算出することが可能になります。
     視聴率の粉飾がしにくくなります。
     NHKの課金額を視聴時間に比例した形で決定することが可能になります。
  • 5、全ての車両の移動記録が自動的に行われるようになる
     あらゆる車両の現在位置がサーバーサイドに保持されます。
     事故車両を迅速に検出することが可能に。
     また、他の車に接触することを非常に高い精度で予測することができます。
     その場合は自動的に減速するため、事故の規模が小さくなり車同士の死亡事故が大幅に減少します。
  • 6、ネット投票、直接選挙制が実現
     代議制ではなく、政策そのものに直接投票することが可能になります。
     自分で判断が難しい議案については、任意の人に判断を委ねることが可能に。
  • 7、音楽視聴についての従量課金制が可能に
     従来の買い切り方式とは別に再生回数に応じた課金方式が実装されます。
  • 8、すべての商品へのICタグの埋め込み、ICタグリーダーの携帯への埋め込み
     自分の部屋にある本やCDのリストを一瞬にして作成することができます。
     小売店などの在庫管理が簡単で正確になります。
     同じ商品を注文する場合はICタグリーダーを一回操作するだけで可能になる。
     町で誰かが着ている服と同じ服を瞬時に購入することも可能。
  • 9、建築の資料化
     建築材料にもICタグが埋め込まれるので、どの建物がどういう構造材と部品で作成されたのかが資料として残ることになります。
    違法建築物を建設することが難しくなり、ユーザーによる検出が可能になります。
  • 10、個別の食品情報の詳細化
     生産者、生産時期、原材料などの情報を細かく詰め込むことができます。
     材料の記録を再起的に遡っていくことで、添加物などを含むすべての含有物質の出自を突き止めることが可能に。
  • 11、オンラインゲーム的なPC
     PCのインターフェースがオンラインゲーム的なものになります。
     Amazonのような購買ツールやオフィス系のアプリケーションのようなものも
     すべてオンラインゲーム状のインターフェースの中に取り込まれます。
  • 12、検索エンジンが意味を理解するようになる。ネットのライブラリ化
     複雑な質問に対する回答が用意できるようになります。
  • 13、言語翻訳の精度向上
     サーバー上にある膨大な量の翻訳例文対照とそれに対する高速な検索ロジック、
     目的語の置換、高精度の文脈判定ロジックにより、完全に近い翻訳が可能に。
     同時に音声解析技術も発達し、各国語をリアルタイムに相互変換することができるようになるため、
     一般的なビジネスの交渉などでは通訳が不要に。
  • 14、在宅で仕事をすることが普通に
     PCにカメラとマイクを接続することが標準化する。
    集団作業の効率化を行うアプリケーションによって、PC上ですべての作業を行うことが可能に。
     それに伴ってほとんどの労働者は在宅勤務化する。
  • 15、ネット上の商品情報がもっと豊かになる
     すべての商品に360度方面からの画像が添付され、モデルを動かしたり拡大縮小することができる。
     この拡大された画像は肉眼で接近した精細度とほぼ同等。
    (360度の画像を撮影し、データ化してアップロードするフォーマットが規格として認定され、これを自動的に行う機器が販売される)
     素材感や質感については規格化、データベース化され、ユーザが手元にないサンプル素材集を要請することが可能。
     衣類については自分のサイズや好みのデザインや質感、素材、色で横断的に検索することが可能に。
  • 16、好みに応じた自動的な商店検索
     歩いていると携帯が勝手に自分の好みに応じたレストランを見つけてくれます。
     他のレビュー者との偏差を算出するために自分も店の評価を行う必要はありますが。
  • 17、フレキシブルな乗り合いタクシー、バスが可能に
    複数の人がもっとも安価に移動する手段を瞬時に計算できる。
    このため、リアルタイムに稼動する乗り合いタクシーや乗り合いバスが実現する。30分前とか事前に予約しておく必要はあると思いますが。
    精密な需要予測を行うので、人が必要としている場所には常にタクシーが存在するようになる。
    人を乗せずに走る時間がほぼなくなり、非常に運送効率がいいので現在の半分以下の運賃でも十分に採算がとれるようになる。
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まとめ:
現実世界が電子的な世界に溶け込んでいく。
より認知的(曖昧ではないという意味で)、分析的、統計学的な環境になる。

逆に言うと感情性や曖昧さ、野蛮さなどが駆逐される危険性がある。
「ネットワークが現実を飲み込む」というモデルに拒否反応を示す人が出てくる。
老人はついていけない人も多いでしょう。

ネットワーク化の進行に伴って、表現の自由度が向上すると
2ちゃんねるに見られるように「受け狙い」「無闇な攻撃性」「保守性」などの
普段は隠されている感情的バイアスが表面化する可能性がある。
(そういう意味では直接選挙制というのは実行速度は速いが間接選挙制のようなクッションがなく、
 集団の感情的バイアスに影響されやすいという点で単純な導入は危険か)

*1:といってもWikipedia 火星によるとNASAは国防費の20分の1しか使っておらず、さらにその一部が火星探索に使われているだけらしい