理想の高校入学の校長挨拶を考える

私には世界がどうなるかを予測することはできない。
まあ世界は変わっていくのだろう。
いろいろな就業形態は出てくるだろうし、この学校がすべての状況に対応できるとは思わない。
自分で起業する人や自営業に就く人もいるだろう。
しかし現行の社会が存続していくと考えるのであれば、
君たちの多くは企業に就職するだろう。

高校はそんな君たちのためにできることをやらなくてはならない。

現行の社会は新卒重視だ。
最初に就職した業種が非常に重要だ。
「最初の業種経験」を変更することは誰にもできない。

大学を卒業したらすぐに「一生続けていくという確信を持った業種に就く」ことが求められる社会なのだ。
もしも就業した後で「やっぱりこの業種は自分には向いていない」と思っても
そこから業種を変更するのはものすごく困難だ。

なぜなら25歳をすぎると「未経験でよい」という求人は急減するからだ。
業種によっては実質的に途中入社が不可能であるものもある。

新卒重視の姿勢を社会が続ける限りは、
小学校、中学校、高校、大学の中でもっとも重要なのは高校であることには間違いがない。

企業に入るにはそのために適切な大学を出ている必要がある。
大学を選択した時点で入れる企業は限定される。

つまり、大学入学時点で、将来の方向性は決まっていないといけない。

高校卒業以降に人生設計を大きく変えることは一気に難しくなる。
逆に言うと人生設計を行うのは今このタイミングを置いて他にはない。

高校卒業時点、いや大学を選択した時点で完璧な人生設計ができているべきだ
大学選択が人生設計のリミットである。

「自分が一生続けていくことがなんなのか」を高校最初の1年か2年のうちに決定すること。
それが死命だ。
それができないと幸福な就職をすることはできない。
何年も何十年も自分と適合する仕事を探し続けるか
やりたくもない仕事を延々とやり続けるという無駄に苦しい人生になってしまう。
逆に最初に正しい業種を選んだならそこからステップアップしていくのは難しくはない。
このゲームでは最初が肝心で後は比較的どうにでもなるのだ。
社会で行われているゲームのルールを熟知せよ。

君たちの人生を成功に導くために、この高校では、1年以上を職業の研究に使う。
徹底的にあらゆる職業を研究してほしい。
実際に職業に就いてみることも推奨する。
どんどんアルバイトしてくれ。
職業者へのインタビューなども行うべきだ。
自己分析をして、自分がこの一生で何をするべきなのかを考えろ。
そしてその仕事を続けていけるという確信を掴んでほしい。

もう一年を育児と犯罪、人間関係、心理学、PC技能、世の中のトラップについて学ぶ。
世の中は多くのトラップに満ちている。
君たちが罠にはまらないように、その多くを網羅的に研究する。
このカリキュラムを終わった暁には人間としてかなりの自己管理能力を持つことになるだろう。
長い人生を生き抜くためには自己管理能力は必須であると学校は考える。

最後は完全に受験勉強のみを行う。
受験はくだらない形式に過ぎない。
教科の勉強は実社会ではほぼ役に立たない知識であるから、
そんなものに時間をかけるのは無駄というものだ。
しかし、ハードルとして用意されている以上はそれはクリアしなくてはならない。

本当に受験に必要な勉強のみを完璧に行う。
申し訳ないし残念なことだが、君たちはこの年だけは機械になってくれ。
1年次に目的意識をはっきりと持つことができたものには、
この試練を乗り越えられるものと私は信じている。

尚、この高校には夏休みや冬休みといった無駄な長期休業は存在しない
長期休業は忘却と断絶、モチベーションの低下が発生するだけでなにもいいことはないからだ。
肉体の鍛錬は授業の中に必要十分なレベルで組み込まれているので、クラブ活動はこれを許可しない
受験に不必要な科目の授業は基本的に行わない。
そんな無駄なことをやっている暇はない、

社会システム上、この3年間は一生の中でもっとも重要であることは自明である。
その重要な3年間に全力投球しなくていったいいつ力を使うというのか。
これは戦争だ。
社会というのは理不尽であり、自動的に与えられる救いなどはない。
君たちは理不尽さと戦うための戦闘力を身につけなくてはならない。
「高校生活をエンジョイする」などといった甘い考えは捨てていただきたい。
人生を台無しにするかどうかは3年間の君の努力にかかっている。
健闘を祈る。